対談 思い込み交流のすすめ 内田富子 田村伸子
内田さんと田村さんは、御主人がガンで昇華しましたが、同じ病院で同じ時期に一緒でした。今日は、ひさしぶりに出会った二人の対談です。
田村
最後は個室に移ったんです。
それで、三日くらい前かな、御父母様の写真を振り返って、「駄目だったな。勝っていると思ったんだけどなあ」って言ったんです。その時彼は覚悟したんだと思います。
意識ははっきりしてるんだけど、幻覚を起こしたりとか、言っていることがわけがわからなくなってくる、夜中によく目をさまして、なんか外に出て行こうとしたりとかね。霊界見てたんでしょうね。
内田さんはどうでしたか?
内田
最後は話ししませんでした。でも、ある教会の人が来て手紙の件でやりとりしたあとで、「じゃ内田さん、奥さんに愛の証を示してください」と言ったら、本当に最後の力をふりしぼって、がばっと起き上がって、口ずけしてくれました。あれだけは忘れられません。
その人が帰ったあと、主人のお姉さんがちょうど来てくれたんです。そして交代して私が帰ろうとしていました。
そうしたら、うちの主人がね、お姉さんが来てから手を、手招きするように動かすんですよ。「どうしたの?誰かいるの?」と聞くと、「うん、いっぱい人がいるんだ」と言うんです。
霊界から来てるんだなと思いました。こうやって手招きするから、知っている人なんですね。いっぱい来てる、いっぱい白い服を着ているようなことを言っていました。それから三十分くらいしてから意識が無くなり、血圧が測れなくなって最後となりました。
確かに昇華した時は、悲しかったけど、なんとなくそこらへんにいるという感じが息子もしていて、だから泣きはしたけど、そんなに激しく悲しくはなかったですね。
田村
私も全然そんなつもりじゃなかったのに、急に夜九時くらいに「今日が山ですから」と言われて、「えー、そんな!」とか思ったらやっぱりそうだったんですね。やっぱりうちの主人も最後の力を振り絞りましたね。
でも亡くなってからどんなでした?
内田
病院に入院してからも、ああ泣いてちゃいけない、今泣いてたらどうするという思いでした。
でいざ昇華してみたら、仕事もありますし、そんな今泣いている時じゃない、借金の清算をどうするかとか、息子のこともあるし、だから自分が滅入ってられないというのがありました。
だから子供のゆえに自分も支えられていたんだなあというのもありましたね。
で三月二十二日の息子の誕生日の朝に、息子が夢を見たんです。
お骨の奥から、すごい光が来て、うちのお父さんがそこから出てきて、別に何も話さないけど、しばらく一緒にいてくれてね、でまた向こうに帰ろうとするから、息子が、追いかけて行こうとしたんだそうです。そしたら、あまりにもまぶしくて、ついていけなかった。
でも、そうやってお父さんが来てくれたんだって、起きてすぐ言うんですね。すごく嬉しそうにしていました。それが最初の夢でした。
主人はいつも息子を愛し、自慢していましたからね。
「あ、やっぱり息子のことは気がかりなんだな」って思いました。
田村
落ち込む時間とかは、ありませんでしたか?
内田
一人になると駄目ですね。ずっと落ち込んでいました。でも子供の前でそんな顔してられないから、駅おりて帰ってくる道なりに、元気な顔に仕切り直ししました。
息子は息子で、一人しかいないから寂しいということで、息子と私との間にはかえって会話はあるんです。普通は中学三年くらいになると、男の子は話さないと言うけど、お互い話すことで支えあっているって感じがします。
病気は、主人がだんだん食欲が落ちてきて、身体がきついという感じだったんですね。で、夏ばてだろうと思っていたのですが、検査をして胃がんだと分かりました。それで入院したんです。
それで温熱療法を二回、三回やりましたが、結局体力が続きませんでした。
今思うとそんな治療しないで、ある程度おさまった段階で家に帰ったほうが良かったのかなと、あとでいろいろ思うんです。
田村
そうなんですよ。ああすればよかった、こうすればよかったと思うことばっかりですよね。
内田
食道にも転移してたし、胆管もその影響でつまってたし手術できる状態ではなかったんです。体力もなかったし。もっと早く行ったら何とかなったかもしれないと、本当に後悔するんです。
田村
ああしておけば良かったんじゃないかとか、それで自分を責めて、自分がよけい傷ついて、よけい辛くなっちゃくんですよね。でも、言う場所がないじゃないですか。
内田
そうそうそう。言う相手が無くてね。
田村
親にはもうこれ以上心配かけられないから、言えないし、兄弟姉妹に言っても本当のところは分かってもらえないから話す気にならない。
言う場所がないからどんどん、ぐるぐる巻きになって、私はこのまま行ったらうつになると いう瞬間がありました。
近くに同じような境遇の昇華家庭がいて、悲しさや辛さを分かち合うことができれば、すごく救いになるじゃないですか。共感できるし、だいたいさっと話して、ああいう思い通過したんだよね、そうだよねと思うじゃないですか。
でも現実は、話す場がなく、思いっきり泣くこともできず、私なんか信仰がないので、いろんな思いになりました。
内田
私も最初の一年はやっぱり取り残されたような思いをしてましたよね。主人はもう霊界に行って大きく前進してるんだろうなと思うと、自分は、あの昇華した時点で留まっているというのがね、なんかすごく苦しかったですよね。
田村
そうですよね。前進できないんですよね。
内田
それから先が全然進めないというかね。最近やっと、そうでもないかなとなってきたけど。
田村
時間かかりますよね。昇華の時点で止まっているというのは、すごく分かる。身体だけ動いているんだけど、なんか魂がとまっている。
内田
そうそう。
田村
こんな状態で、私は生きていて意味があるのかなと、そこまで考えました。はやく死んじゃおうかなとか、思いましたよ。子供がいないから、かまう人がいないでしょう。
内田
千葉に大母様が来られる日に、息子が夢を見たんです。主人が三日間だけ許しをもらって、家に帰って来たというんです。そうかと思って大母様の集会に行ったんです。そしたら行く時に不思議な感覚があったんですね。
千葉に行く前の駅で、清算しようと思って切符を入れると、うしろから中年男性が手を出してきて、「それしなくていいから、僕がこの券あげるから」と、清算したあとの券をくれるんです。
くれたというより、結局その人とお金で清算するような形になりましたが、実際に清算するよりはずっと安くなりました。それで清算が終わって改札を出ようとすると、清算してない切符と清算した切符を一緒に入れたため、ドアがばたんとしまってしまいました。そしたらそのおじさんが来て、「だめだよ、一緒に入れちゃ」と、清算してない券を自分が持っていって「じゃね、さようなら」と言って、駅の中に消えていきました。
駅を出てから息子と、「あれはお父さんだったかもしれないね」「そうか、お父さんも一緒に大会に来てるんだ」と語り合いました。そんな最初の一日で、あとの二日間は、普通の日だったんだけど、そんなふうにしてね、お父さんって、こんなふうに一緒にいるのかなという感覚でした。
息子が見る夢も、最初の頃は笑顔も何もないむすっとした顔だったけど、日がたつにつれて本当に笑顔っていうか、教会ですごく楽しくしているという夢だったよとかね。で、いつものように帰ってきてね。
ただいまというから、息子がどこに行ってたのと聞くと、「教会とかいろいろ」と、いろいろ言うんだそうです。でもお父さんが霊人体だというのを息子は、はっきりと自覚しているんです。
明るくて、しっかりしていてとてもにこやかにしている。同じこの部屋にいた友達にはお父さんは見えなかった。だから本当に霊人体なんだというすごい確信持ったそうです。
私もめったに夢を見ないけど、三人で楽しくたわいもない話をしているという夢を見ことがあります。地上界では、あんまり深い心情的交流をしてなかったから、もっと話しておけばよかったというのが私の中にあって、それがこりかたまって、恨みたいにして残っているんですよね。
だから主人にもそういうのがあるんじゃないかななというのがあるし、愛しきれなかった部分とか、誤解していた部分とかあるから、そういうのが本当に辛くて、だから主人もそういう思いをもっているんじゃないかなという思いがあるもんだから、よけいこの霊的交流がむつかしんです。
田村
霊界に行くのって、結構楽しみじゃありません。今死ぬとかじゃなく、別に怖くはないっていうか。
内田
そうですね。
田村
私たちが霊界に行く時って、再会の時じゃないですか。だから、私はけっこう楽しみなんです。
でもレベルが違って、会えなかったらどうしようとか、いろいろ不安はあるので、まだ行けないんですけど。私も全然夢見なくて、他の人は御主人が夢に出てきて、こう言っていたとかと聞くと辛くて。
内田
そうそう。そういう証を読んだり聞くとね、苦しくなる。もういいって、ちょっと見たくないって。よかった。私だけじゃないんだ。
田村
ある霊的な姉妹に、お母さんが来ているってどうして分かるのと聞いたら、それはすごく感覚的なものなんだよって言われて、で説明はできないんだけど、もしかしたら思い込みかもしれないんだって。
でも思い込み交流を進めていくことによって、どんどん本当になっていくって、どんどん確信がでてくると思うよって言われたのよね。だから思い込み交流でもいいのかなって。
私も主人との交流ができなかったり、夢にも現れてくれなくて苦しんでいた時期があったんですけど、それがもう出来たと思いこんで、やっちゃう、できたと考える、そうしてありがとうございます、感謝しますを実行しはじめているんですけど、どうもちょっと違う感じですよ。なんか見えない世界を動かしていくということなんでしょうね。
今日はいろいろお話しできてとても嬉しかったです。いつかまたよろしくお願いします。